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具体の精神と素材の選択
ARTIST miuは、1950年代に日本で結成された「具体美術協会」の精神を真正面から受け継ぐ作家である。
彼女の出発点は、宝塚造形芸術大学で師事した前衛芸術家・嶋本昭三による教え——「誰も見たことのないものをつくれ」——この一言に集約される。
彼女が注目したのは、誰もが見過ごしがちな素材、セメントであった。
工業的で無機質、建築材料としての役割を担うこの素材を、彼女は「負」や「陰」を象徴するものとして読み替える。
そして、その冷たさと無色性をベースに、そこにエポキシ樹脂による色彩と光のエネルギーを流し込むことで、視覚的な変換を試みるのである。
この素材選択は単なる“珍しさ”にとどまらない。
miuにとってセメントとは、現代社会の硬直性や閉塞感といった精神的構造そのものを象徴する素材である。
そこに対し、流動的で発色の良い樹脂を介在させるという行為は、静的な構造に動的な生命性を注入することであり、マテリアルとエネルギーの拮抗を視覚的に立ち上げる試みである。
細胞というモチーフと構成のリズム
代表作《Beautiful cell – 美しき細胞 –》シリーズは、セメントを塗った木製パネルに、リズム良く配置された円形の穴を穿ち、その内部に着色したエポキシ樹脂を流し込んで制作される。
制作工程には、時間と手間がかかる。まずは木製パネルに木工用ボンドを塗布し、上からセメントを重ねて一晩乾かす。
次に円形の空洞を施し、そこにエポキシ樹脂を2色ずつ、細い注射器のような道具で注ぎ込む。
ここで重要なのは、色の偶発的な混色が作家の意図と交差する瞬間を見逃さない観察眼である。
数日間かけて乾燥させ、必要があれば再着色や表面の磨き直しを行い、最終的に作品が完成する。
この円形は、作家の語る「細胞」そのものである。
すべての生命は、細胞分裂というプロセスを経て成長していく。
その根源的なエネルギーの象徴として、彼女は幾何学的かつ有機的なモチーフを用い、均一ではない色の揺らぎに個々の存在の唯一性を託している。
円の配置には音楽的なリズムも感じられる。
それは、数学的な規則性と、偶発性が重なり合うことで生まれる「秩序と自由」の共存であり、彼女が考える生命や社会の在り方そのものである。
反転の美学と現代アートの役割
ARTIST miuの作品に共通するのは、「負から正へ、陰から陽へ」という価値の転換のプロセスである。
これは単なる色彩の変換や装飾的効果ではない。彼女が作品に込めているのは、個人的な感情の昇華と、社会への応答である。
コロナ禍という未曾有の危機に直面したとき、彼女は《Awakening – 目醒め –》という新シリーズを生み出した。
偶然性の強い色の混ざりを中心に据えたこの作品群は、固定的なフォルムを持たない、流動的な「気配」や「希望」のようなものを内包している。
こうした試みは、単に「癒し」や「美しさ」を提供するものではない。
むしろ、アートという表現手段によって、現代人の深層にある不安や自己喪失感に触れ、それを言語以前の方法で回復させようとする、視覚の中に潜むセラピーなのである。
美術は時に、観念の壁を越えて「気づき」の体験をもたらす。
そのために、miuは素材と向き合い、制御と偶発のはざまで色を注ぎ、見る者の心に「自分自身を肯定する力」を届けようとしている。
日々の中に確かな祈りを置くなら、ARTIST miuの作品はその一歩になるだろう。
セメントの静寂に光彩の躍動が交差する瞬間、私たちは「希望とは、つくりだせるもの」であることを思い出す。
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Schedule
Public View
4/19 (sat) 11:00 – 19:00
4/20 (sun) 11:00 – 17:00
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